人を拾う話

人を拾う話04

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「一人暮らし、ですけど」
 相手のペースに呑まれた晃司がつい答えてしまうと、男はニッと笑った。
「ここは所帯持ち向けだろ。嫁さんに逃げられでもしたか」
 確かにこのマンションはファミリー層向けではある。大学生時代に起業し、多少なりとも収入が得られるようになったところで、自宅でも作業が出来るようにと借りたのだ。
「そういうわけでは」
「じゃあ決まりだな」
 男が立ち上がってエントランスに入る。慌てて追いかけた晃司が止めるまもなくエレベーターの呼び出しボタンを押した。ちょうど一階に止まっていた籠に乗る。
「何階だ」
「二階です」
 反射的に答えたことを意識したときには、既に扉が開いていた。

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