人を拾う話

人を拾う話10

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 男は晃司のことを見送ると、駅とは反対方向に向かった。2ブロック歩く間にさり気なくコートを脱ぐ。遠回りをして駅に着くと、改札を抜けコインロッカーを開けた。中には明るいベージュのコートと手提げ鞄が入っている。コートを入れ替え鞄を持つと、ふたたび鍵を掛ける。人目につかないロッカーの影で、ブランドのコートを身につけ、手櫛で髪型を整えればセールスマンに見えた。

 駅を出た男は、今度は最短距離でマンションに戻る。エントランスを無視して路地に入り、裏口から入る。そこから階段を上れば防犯カメラに映らずに晃司の部屋まで行けることは確認済である。
 さっと周囲を見回して、誰もいないことを確認する。男は晃司の部屋のドアポストに手を入れた。

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