人を拾う話

人を拾う話11

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 チラシを投函する振りで、隠し持った道具を動かす。鍵は簡単に開いた。築年数の古いマンションで、防犯対策も不十分であることには気が付いていた。
 無人の部屋に上がり込む。
 万が一、住人に姿を見られた場合を想定し変装していたが、ここまでは誰にも注目されていないはずである。

 晃司は部下に残業の多さを指摘されて、それでも本来の終業時間を一時間過ぎたところで会社を出た。学生時代からの仲間が書類仕事をしているほかに、プログラマがまだ一人、作業を続けている。
 入社してまだ三ヶ月だが、年明けにもβ版を公開する予定の新機能の開発主任だ。
「桧山君もあまり遅くならないように」
「社長に言われても説得力無いっすよ」
 画面から視線を外さないまま軽口が帰ってきた。

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