人を拾う話

人を拾う話12

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 学生時代からの仲間である長谷川に戸締まりを任せて、晃司は会社を出た。雑居ビルのワンフロアを借りているが、そろそろ手狭になってきたと感じている。いわゆるオタク向けのサービスを行う会社で、もともとは友人たちと始めたサークルだった。自作の同人誌を電子書籍やPDFとして販売したの機に、個人向けのクラウドソーシングで電子書籍とPDFを作成する仕事を募集した。始めてから一年半で起業を決断したのは、想像よりも需要が多かったためである。

 マンションの前まで来た晃司は、辺りを見回した。今朝の男はいない。解放されたとほっと胸をなで下ろしてエレベーターで二階に上がる。
「よう、今日は早ぇんだな」
 玄関前に男が座り込んでいた。大きなトートバッグを持っている。

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