人を拾う話

人を拾う話18

Views: 1


 翌朝、晃司が身支度を済ませてリビングに行くと、佐倉がソファーでコーヒーを飲んでいた。昨夜風呂に入ったおかげで、身なりも随分さっぱりしている。もともと汚れた感じはそれほどなかったが、顔や髪のベタつきがなくなるとこうも違うものかと思った。洗濯済みの服に着替えているのも要因の一つだろう。
「また勝手に」
「まあインスタントの一杯くらいケチケチするなよ」
 会社には全自動のコーヒーマシンを置いているが、晃司自身にはあまりこだわりはない。
「せめて一言言ってくださいよ」
「ほい、晃司の分」
 普段、出かける前は家でコーヒーを飲むことはないが、せっかくだからと口を付ける。
「すぐ出かけるのか」
 晃司は腕時計を見た。もうすぐ七時だ。
「半までには出ますよ」
「じゃあ顔洗ってくるわ」
 佐倉が立ち上がって洗面所に向かった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました